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APPLE CAPITAL / ACRI ③
あっぷる総研 / ACRI ③(夕張研究の継続)

立地適正化計画は
「残る場所」を当てているか

― 居住誘導区域 × メッシュ残存力スコアの実証監査 ―

東北6県 28,207メッシュ / 立適6市の点-多角形判定 / 当社9物件の接合監査 / 敵対的査読3名

主任研究員 川上美咲 / オーケストレーション 桐島渉(IT推進部) | 2026.06.22 | PJ00-06 ACRI③

第1章 / 問題設定

政策の線引きは、データの線引きと一致するか

夕張研究(ACRI②)の核心は「立適計画は未来の地価マップ」だった。区域内か外かが20年後の資産価値を二分する。ここで素朴な問いが立つ——その行政の線引きは、本当に"残る場所"を正しく当てているのか?

当社の「東北6県メッシュ格付けアトラス」(28,207の1kmメッシュを特S/A/B/Cで格付)を"データの線引き"とし、立適の居住誘導区域という"政策の線引き"と重ね合わせる。夕張・清水沢集約は、両者が高整合で引かれた"100点の答案"=ground-truth。

行政が引いた"残す線"の内側に、
データが見限った土地は混じっていないか。
第2章 / データと方法

二系統で監査する

データの線引き:メッシュ格付け
東北6県 28,207メッシュ(特S647/A2,797/B7,237/C17,526)。3層合成=市町村体力40%+立地45%+産業定性15%。重心座標・スコア・ランク・ハザードフラグを保有。
政策の線引き:居住誘導区域
国土数値情報A50(立適区域・2020年度版)の居住誘導区域ポリゴン(A50_006=2)。
手法①:都市レベル
A50ポリゴン×アトラス重心の点-多角形判定(ray-casting)で区域内/外を分類→平均score比較。
手法②:物件レベル
当社東北9物件を住所→最近接1kmメッシュ(全件0.7km以内)に接合→ランク取得→区域監査と突合。
検証:敵対的査読3名
独立スクリプトで再計算。物件接合は2系統(ハーバサイン+JISメッシュコード導出)で全9件一致、都市重合は6市すべてn・平均・分布が完全一致を確認。
結論

立適は"残る場所"を概ね当てている

6/6
立適市すべてで
区域内平均 > 区域外平均
+8.8〜
+16.2
区域内−区域外の
平均scoreの差(点)
5/6
区域内にC(最低)
メッシュがゼロ
立適は"残る場所"を当てている。ただし、線引きがある場所だけだ。
第3章 / 結果① 都市レベル

区域×メッシュ 重ね合わせ(点-多角形判定)

市区域内 n/平均区域外 n/平均差整合
郡山市20/77.2449/61.0+16.2最も明瞭(区域内 特S18集中)
花巻市6/62.4472/47.5+14.9強い整合(区域内 全A)
十和田市8/56.7238/43.2+13.5部分整合(区域内 主にB)
仙台市13/62.9497/50.3+12.6整合(特S+A率77%)
弘前市22/65.7214/53.6+12.1強い整合(区域内 全A)
青森市32/66.0214/57.2+8.8整合(特S+A率97%)
米沢市判定不能―A50-2020 未収録
南相馬市判定不能―A50-2020 未収録

全6市で区域内 > 区域外。構造的に弱い十和田すら区域内(主にB)が区域外(B101/C137)より明確に高い=政策は相対的最良メッシュを掴む。米沢・南相馬は"区域なし"でなく"データ未収録"として誠実に除外。

第4章 / 結果② 物件レベル

当社9物件 区域監査(政策)× メッシュランク(データ)

記号物件 / 市ランク区域監査(政策)政策 × データ 判定
⑮仙台 / 青葉区特S 82.7区域内(推定)一致:区域内×高(9件中最強)
⑨弘前ウェストヒル / 弘前A 67.6区域内(確定)一致:区域内×高
⑦米沢KS春日 / 米沢A 68.5区域内(1-3丁目)一致:区域内×高
④メゾンドアーク / 青森A 65.5区域内(境界)一致:区域内×高
⑫郡山グレースランド / 郡山A 69.2 洪水判定不能保留(高ランクだが洪水フラグ)
⑬十和田メゾントワダ / 十和田B 57.7都市機能誘導内保留(市の天井=Bに張付き)
⑭南相馬MOMO / 南相馬B 57.4立適なし(策定中)保留(区域未確定)
⑪花巻プリムローズ / 花巻A 59.0区域外乖離:底堅(区域外なのにA)★
⑧宮城アーバン / 村田町C 43.3立適なし一致:区域外/撤退×低(撤退適地)

区域内の純粋4件(④⑦⑨⑮)は全てA以上。区域内×低ランクC(隠れリスク)は本9物件には不在。誤接合ゼロ(査読2系統再現)。

第7章 / 線引きの空白こそが論点

政策とデータがズレる、2つの方向

① 取りこぼし型(区域外 × A)
⑪花巻プリムローズ。花巻市全体は特S+A率8%と低いなか、当該メッシュはA59.0=市内の数少ない強メッシュ。居住誘導区域がこの強メッシュを区域外に取りこぼした可能性。区域外=即・撤退ではない好例。
② 無指定型(立適なし × C)
⑧宮城アーバン(村田町)。立適計画そのものが存在せず、メッシュもC43.3。データ上"結果整合"だが、これは政策が当てたのではなく政策が不在なだけ——誘導区域という資産防衛線が存在しない。
「線引きが残存力をよく当てている」のは、
線引きが存在する場所に限った話だ。
第5章 / MVV框組との接続

残存力という共通言語

本監査はMVV策定の評価哲学と構造的に同型。MVV設計の『人口増減でなく〈減っても賃貸需要と生活機能が残るか〉を見る』向きは、メッシュ残存力スコアと完全一致する。

7カテゴリ=多変数分解
人口20+住宅20+雇用18+都市機能15+交通12+財政8+災害7。上位3カテゴリ58点が「留まる/住む/働く」=残存力の中核。
光る市町村=雇用核
「核隣接×工業立地が人を留める」=雇用18点の操作化。⑨弘前(大学前駅至近)が区域内×A67.6で一致=框組の妥当性を例示。
災害カテゴリ=ハザード
災害7点はメッシュ単位ハザードと直結。⑫郡山のflags=洪水がその実例。高ランク=安全ではない。
第6章 / 夕張という ground-truth

"100点の答案"からの距離で読む

夕張(清水沢集約)は本研究の定量サンプルではなく、定性的アンカー="100点の答案"。財政破綻後、全国に先駆けて managed shrinkage を都市政策の正面に据え、居住誘導区域を清水沢へ集約、既成市街地の約7割を区域外に置いた。この線引きは人口移動・空き家化という"データ側の残存力"と設計段階から高整合で引かれた。

夕張は北海道でアトラス対象外=同一指標空間での比較は不可。よって東北の結果を"夕張という到達点からの距離(乖離度)"として読む。⑧村田町(立適を持たない縮小都市)は、夕張の対極の具体例である。

第8章 / 賃貸経営インサイト

取得基準の「第6軸」を持つ

① 第6軸=メッシュ残存力ランク/雇用核徒歩圏
利回り・LTV・DSCR・築年/構造・駅距離に加える。区域内×A以上=底固め(④⑦⑨⑮)/区域外×A=底堅で割安取得余地(⑪花巻型)/区域内×B/C=隠れリスク要警戒。
② 立適なし都市はメッシュを独自基準に
村田町・南相馬は"区域内=防衛線"が使えない。市全体の特S+A率(村田0%/南相馬1%/十和田0%)を都市の天井指標として保有規模を抑制。
③ 区域内でも「市の天井」を過信しない
⑬十和田は都市機能誘導内(中心拠点)だがB57.7=市の天井に張付き。区域指定の有無より「区域内ランクの絶対水準」と「市全体の特S+A率」を併読。
④ ハザードフラグは別軸で必ず併読
⑫郡山はA69.2(高残存力市)だがflags=洪水。高ランク=安全ではない。保険・修繕・出口で割り引く。
第9章 / 限界(誠実な開示)

言い切れないこと

米沢市・南相馬市は国土数値情報A50-2020に立適区域が未収録で都市レベル判定不能("区域なし"でなく"データ未収録")。A50最新が2020年度版のため2021年以降の区域変更は未反映。
区域内に入る当社メッシュは6〜32件と少ない(誘導区域が中心市街地に局在)。仙台市はアトラスが市一括510メッシュで区域別集計不可。物件座標はジオコーディング推定を含む(⑮仙台=町丁未特定の代表座標)。
夕張は東北アトラス対象外のため定量比較不可、定性アンカーに留める。本稿は当社内部の研究記録であり投資助言ではない。推定箇所はすべて推定と明記した。
第10章 / 結論

区域内であることは、
もう"安全の証明"ではない。

立適は東北6市すべてで"残る場所"を概ね当てていた。しかしそれは線引きがある場所だけの話。区域外なのにAの花巻、計画すら無い村田町——政策の線引きの空白を埋めるのは、大家自身が持つ「メッシュ残存力」という第6軸である。

主任研究員 川上美咲 / IT推進部 桐島渉 | 2026.06.22 | PJ00-06 ACRI③ | 夕張研究ACRI②の継続

出典:東北6県メッシュ格付けアトラス/国土数値情報A50(立適区域)/社人研2050/夕張市立適計画。※投資助言ではありません。

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